「同じくらいの子はもう話しているのに、うちの子は言葉が遅いかも…」——これは発達のなかで特に多い不安のひとつです。本記事では子どもの言葉(ことば)の発達の年齢別の目安を、国際的なガイドライン(米国CDCの発達のマイルストーン)と日本の乳幼児健診の基準をもとにまとめ、博士パパの視点で「発達の幅」と「相談の目安」まで解説します。結論から言うと、目安はあくまで幅があり、大切なのは“いつ相談すべきか”を知っておくことです。
結論:年齢別「言葉の発達」の目安(早見表)
下記は一般的な目安です。「その月齢で多くの子ができること」を示すもので、CDC(米国疾病対策センター)の2022年改訂版は「75%の子が達成する時期」を基準にしています。個人差は大きいので、1つの参考としてご覧ください。
| 年齢 | 言葉の発達の目安 |
|---|---|
| 〜1歳ごろ | 喃語(「ばばば」等)、指さし、名前を呼ぶと反応。身ぶりでのやり取り |
| 1歳ごろ | 初めての意味のある単語(初語)。初語の平均は約12か月 |
| 1歳半 | 意味のある単語がいくつか(健診の目安=単語3つ以上)。「ちょうだい」など簡単な指示が分かる |
| 2歳ごろ | 二語文(「まんま ちょうだい」)。語彙が急に増える子も |
| 2歳半(30か月) | 語彙はおよそ50語以上、2語以上を組み合わせて話す(CDC) |
| 3歳ごろ | 三語文。家族以外にも話が概ね通じる |
※「理解(聞いて分かる力)」は「話す力」より先に育ちます。話す言葉が少なくても、指示が通り、指さしや身ぶりでやり取りできているかも大切な観点です。
言葉が育つ順番(くわしい流れ)
〜1歳:ことばの“土台”づくり
意味のある単語の前に、喃語・指さし・視線・身ぶりといった非言語のやり取りが育ちます。「あれ取って」を指さしで伝える、名前を呼ぶと振り向く、大人の真似をする——これらは言葉の前段階としてとても重要です。
1歳ごろ:初語(はじめての単語)
「まんま」「わんわん」など意味のある単語が出始めます。初語の平均は約12か月。1歳6〜7か月までに大多数の子が有意味語を話すとされます。
1歳半:単語が増える
1歳半健診では「意味のある単語が3つ以上言えるか」が一つの目安に。あわせて「ちょうだい」「ないない」などの簡単な指示が分かるかも見られます。
2歳ごろ:二語文
「まんま ちょうだい」「わんわん いた」のように単語を2つつなげるようになります。この時期に語彙が一気に増える子も多く、いわゆる“ことばの爆発期”が来ることもあります(来ない子もいて個人差大)。
3歳ごろ:三語文・会話
「ママ いっしょに あそぼ」など三語文が出て、家族以外にもだいたい話が通じるようになります。
知っておきたい:言葉の発達には大きな個人差がある
- 「理解」が先、「話す」は後。話す言葉が少なくても、こちらの言うことを理解していれば心配しすぎないでよいことも多いです。
- 性差・きょうだい・環境でもペースは変わります(平均では女児がやや早い傾向、ただし個人差が上回る)。
- 大切なのは「他の子と比べる」ことより、その子なりに少しずつ伸びているか。
「言葉が遅い」と感じたら——相談・受診の目安
次のようなサインがあるときは、自己判断で様子を見続けるより、早めに相談することをおすすめします。早期の相談は“大げさ”ではなく、必要なサポートに早くつながるという意味でプラスに働きます。
- 1歳半で意味のある単語がほとんど出ない/指さしや大人の真似が乏しい
- 2歳を過ぎても二語文が出る気配がない、単語がごく少ない
- 3歳で二語文が出ない、会話のやり取りが成立しにくい
- 名前を呼んでも振り向きにくい/目が合いにくい/一度出ていた言葉が消えた
- 呼びかけや音への反応が薄い(=聞こえの問題が隠れていることも。中等度の難聴は気づかれにくいので注意)
相談先:まずは1歳半・3歳児健診や保健センター、かかりつけの小児科へ。必要に応じて、地域の発達相談や言語聴覚士(ST)につないでもらえます。健診は聴覚の確認の機会でもあるので、必ず受けましょう。
※「言葉が遅い=発達障害」ではありません。背景には聞こえ・個人差・環境・発達特性などさまざまな要因があり、原因は一つではありません。本記事は一般的な情報提供であり診断ではないため、心配なときは専門家にご相談ください。
家庭でできる「言葉を育てる」関わり方
言葉は人とのやり取りの中で育ちます。特別な教材より、日々の関わりの質が大切です。
- たくさん語りかける(実況中継):「ブーブー来たね」「お風呂あったかいね」と、見ているもの・していることに言葉を添える。
- 子どもの声に応える(応答的な関わり):喃語や指さしに「わんわんだね!」と返す。やり取りの往復が語彙を伸ばします。
- 絵本の読み聞かせ:指さししながら名前を言う、同じ本を繰り返す。言葉と意味が結びつきます。
- ゆっくり・短く・具体的に:長い説明より、短い言葉で。質問攻めにしない。
- 対面のやり取りを優先:一方的な動画視聴だけでは言葉は伸びにくいとされます。画面より「人と交わす言葉」を増やす。
聞こえや口の動き(構音)に気になる点があるときは、家庭での工夫だけで抱え込まず、早めに専門(小児科・耳鼻科・言語聴覚士)に相談しましょう。
言葉の前に育つ「指さし」と「共同注意」
言葉が出る前から、コミュニケーションの土台は育っています。その代表が共同注意(じょいんとあてんしょん)と指さしです。共同注意とは、親が見ているものを子も一緒に見る、子が見ているものを親も見る——という「同じ対象に注意を共有する力」のこと。生後9〜12か月ごろから育ち、言葉の発達を支える重要な前段階とされています。
指さしにはいくつかの段階があります。最初は「あれが欲しい」と要求する要求の指さし、次に「あっち見て」と相手の注意を引く叙述(共感)の指さしへと広がります。1歳前後で指さしや、相手と視線・物を共有するやりとりが見られると、言葉が育つ準備が整いつつあるサインといえます。逆に、指さしや視線の共有、名前を呼んでの振り向きが乏しい状態が続く場合は、健診などで相談する目安の一つになります。
語彙が一気に増える「ことばの爆発期」
多くの子は1歳前後で意味のある一語(初語)が出はじめ、しばらくは少しずつ単語が増えます。そして1歳半〜2歳ごろに、覚える単語が急に増える時期を迎える子が多く、これを「ことばの爆発期(語彙爆発)」と呼ぶことがあります。目安として、1歳半で数語〜数十語、2歳で二語文(「わんわん きた」など)が出てくる子が増えますが、これも個人差が大きく、出る時期や増え方は子どもによってさまざまです。
大切なのは単語の数だけを競わないこと。言葉は「数」より「やりとりの中で意味を伴って使えるか」が本質です。指さしながら「これ」と伝える、要求や気持ちを身ぶり・声で表す——こうした非言語のコミュニケーションも、言葉が育つ大切な一部です。
発音(構音)の発達——「さ行・ら行」はゆっくりで普通
「発音がはっきりしない」「赤ちゃん言葉が抜けない」と気になる方も多いですが、発音(構音)は言葉の発達の中でもゆっくり完成する部分です。母音や「ぱ・ば・ま」などの音は早めに、一方でさ行・ざ行・ら行、つ、きゃ行などは難しく、就学前後(5〜6歳ごろ)まで未完成な子も珍しくありません。「さかな」が「たかな」、「らいおん」が「だいおん」になるのは、この時期にはよくあることです。
多くは成長とともに自然に整っていきます。言い直しを強く求めたり、何度も訂正したりすると、かえって話す意欲を下げてしまうことも。まずは正しい音を大人が自然に聞かせる(リキャスト)程度にとどめましょう。ただし、5歳を過ぎても多くの音がはっきりしない、聞き取りにくい、本人や周囲が困っている場合は、言語聴覚士(ST)への相談も選択肢になります。
「英語育児・バイリンガル環境だと言葉が遅れる」は本当?
家庭で複数の言語に触れていると「日本語が遅れるのでは」と心配されがちですが、二言語環境そのものが言語発達の遅れ(障害)の原因になるという確かな根拠はないとされています。バイリンガルの子は2つの言語に語彙が分かれるため、一方の言語だけで数えると一時的に少なく見えることはありますが、両言語を合わせた力で見ると標準的な範囲に収まることが多いと報告されています。言語をまぜて話す(コードスイッチング)のも自然な現象で、混乱のサインではありません。
つまり「英語をやると日本語が遅れる」と過度に恐れる必要はありません。一方で、言語の遅れが気になるとき、その原因を安易に「バイリンガルだから」と片づけて様子見を続けるのも禁物です。気になる点があれば、使用言語にかかわらず健診や専門家に相談しましょう。
テレビ・スマホと「ことば」——付き合い方のポイント
言葉はやりとりの中で育つため、一方的に流れる動画を長時間見るだけでは、対話の経験が置きかわってしまう点に注意が必要です。WHOは2〜4歳の1日あたりの座位スクリーンタイムを「1時間以内、少ないほどよい」、1歳未満には推奨しないとしています。動画やアプリを使うなら、できるだけ大人が一緒に見て「これは何かな?」「ぞうさんだね」と言葉を添える(共同視聴)と、受け身になりにくくなります。
大切なのは時間の長さ以上に、顔を見て交わすやりとりの量です。スクリーンを完全に禁止する必要はありませんが、食事中や寝る前は避ける、見る番組と時間を決める、見終わったら内容について話す——といった工夫で、言葉が育つ会話の時間を確保しましょう。
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よくある質問(FAQ)
Q. 言葉が遅いと発達障害なの?
一概には言えません。遅れの背景には聞こえ・個人差・環境・発達特性などさまざまな要因があり、原因は一つではありません。気になるサインがあれば健診や専門機関で相談しましょう。
Q. 二語文はいつから?
1歳半〜2歳ごろが目安です。3歳で二語文が出ない場合は早めの相談をおすすめします。
Q. 男の子は言葉が遅い?
平均では女児がやや早い傾向はありますが、個人差のほうがずっと大きく、性別だけで判断はできません。
Q. テレビや動画で言葉は増える?
一方的な視聴だけでは伸びにくいとされます。画面より、人と交わす対面のやり取りを増やすのが効果的です。
Q. どれくらい話せれば安心?
1歳半で単語がいくつか、2歳で二語文、3歳で会話が概ね通じる、が一つの目安です。ただし幅があるため、伸びの様子と理解力もあわせて見ます。
Q. 指さしをしないと心配ですか?
指さしや、相手と物・視線を共有するやりとりは言葉の大切な土台です。1歳を過ぎても指さしや視線の共有、名前を呼んでの振り向きが乏しい状態が続く場合は、健診などで相談するとよいでしょう。ただし時期には個人差があり、指さしの有無だけで判断はできません。
Q. 発音がはっきりしないのは大丈夫?
さ行・ら行などは難しく、就学前後まで未完成な子も珍しくありません。多くは自然に整います。強く言い直させず、正しい音を聞かせる程度に。5歳を過ぎても多くの音が不明瞭で困っている場合は言語聴覚士への相談も選択肢です。
Q. 英語育児で日本語が遅れませんか?
二言語環境そのものが言語の遅れの原因になるという確かな根拠はありません。語彙は両言語に分かれるため一方だけだと少なく見えることがありますが、合計で見れば標準的な範囲に収まることが多いとされています。
まとめ
言葉の発達は1歳ごろの初語 → 1歳半で単語 → 2歳で二語文 → 3歳で会話という流れが目安ですが、個人差はとても大きいものです。比べて焦るより、その子なりに伸びているかと、相談の目安(1歳半で単語が出ない・3歳で二語文が出ない・聞こえの心配など)を押さえておきましょう。気になるときは健診や小児科へ。早めの相談は、必要な支援に早くつながる第一歩です。
参考・出典
- CDC(米国疾病対策センター)Developmental Milestones(2022年改訂/Zubler et al., Pediatrics 2022。AAP承認、75パーセンタイル基準)
- 厚生労働省 乳幼児健康診査(1歳6か月児健診・3歳児健診)
- 母子健康手帳の発達の目安/自治体 保健センターの発達相談
- 日本小児科学会・日本耳鼻咽喉科学会(聞こえと言葉の発達に関する情報)
- 米国言語聴覚協会(ASHA)ほか 構音(発音)の発達に関する一般的な目安
- WHO「5歳未満の子どもの身体活動・座位行動・睡眠ガイドライン」(2019、スクリーンタイムの推奨)
- バイリンガル環境と言語発達に関する研究知見(二言語接触は言語遅滞の原因とはされない)
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